福岡高等裁判所 昭和43年(う)826号 判決 1968年6月17日
被告人 古賀銀蔵 外二名
主文
原判決中被告人らに関する部分を破棄する。
被告人古賀銀蔵、同渡辺実、同松尾一枝を罰金一万円に各処する。
右罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。
原審ならびに当審の訴訟費用は被告人らの負担とする。
理由
本件控訴の趣意は弁護人藤井亮、同大石幸二提出の各控訴趣意書に記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。
藤井弁護人の控訴趣意中、大石弁護人の控訴趣意第一、二点
(いずれも事実誤認と法令適用の誤)について
原判決が挙示する証拠により、「被告人らが遊技場経営者又はその支配人であり、原判示期間にそれぞれ石橋万蔵から原判示数量の靴下、ハイミー、ハンカチを買取つた」ことが認められるけれども、右品物中には久留米市の他の遊技場から客に提供した賞品が相当数量混入されているものと推認され各被告人らの遊技場で賞品として提供したものがいくらあるかこれを確かめることができない。
原判決はかかる場合においても風俗営業等取締法施行条例に違反すると解すべき旨説示するけれども、同条例の立法理由、内容を同法二〇条二一条二四条を対比して検討すると同条例は自己の遊技場において客に提供した商品を買取つたり買取らせたりすることを禁じているものと解するのを相当とすべく、原判決の解釈は誤つている。論旨は理由がある。
そこで刑事訴訟法三九七条四〇〇条但書に則り原判決を破棄し、当審において変更を許可した訴因につきさらに裁判することとする。
(罪となるべき事実)
被告人古賀は久留米市東町四六六番地においてパチンコ遊技場「第二国際」を、被告人松尾は同市西町一、六〇六番地においてパチンコ遊技場「アロハ」を、それぞれ経営する者、被告人渡辺は同市西町一、五七〇番地においてパチンコ遊技場「ラツキー」を経営する金鐘達の支配人として同営業を管理する者であるが、被告人らは昭和四〇年七月下旬頃同市小頭町久留米新生遊技場組合事務所において同組合所属の他の遊技場経営者全員と賞品買取りの手段方法を協議した結果、石橋万蔵および馬場義男との間に各遊技場で客に提供する賞品を一律に馬場が客より買取りこれを石橋が買取りこれをさらに各営業者が一律に買取る旨共謀を遂げた上、
一 被告人古賀は同年九月一日頃から同年一一月下旬頃までの間自己の遊技場で客に賞品として提供した靴下二万九〇〇〇足位、ハイミー七万一、〇〇〇個位、ハンカチ八、〇〇〇枚位を同市東町銀座商店街内の賞品買取所において馬場義男をして代金は靴下一足二〇〇円、ハイミー一個一〇〇円、ハンカチ一枚五〇円の割合で客から買取らせ、
二 被告人渡辺は右期間右「ラツキー」で客に賞品として提供した靴下七万四、〇〇〇足位、ハイミー九万一、〇〇〇個位、ハンカチ一万五、〇〇〇枚位を同市西町一、五八一番地の賞品買取所において馬場義男をして客から前記代金で買取らせ、
三 被告人松尾は前記期間に自己の遊技場において客に賞品として提供した靴下二万八、〇〇〇足位、ハイミー四万個位、ハンカチ九、〇〇〇枚位を同市小頭町一、六〇八番地の賞品買取所において馬場義男をして客から前記代金で買取らせたものである。
(証拠の標目)<省略>
(法令の適用)
一 各所為につき各包括して風俗営業等取締法三条七条二項同法施行条例(福岡県昭和二三年条例四一号)二四条四号刑法六〇条(各罰金刑選択)
一 換刑処分につき刑法一八条
一 訴訟費用の負担につき刑事訴訟法一八一条一項本文
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 塚本富士男 安東勝 平田勝雅)